「どう接すればいい?」と悩む介護職に知ってほしい基本と声かけのコツ
認知症の方への対応では、「何度説明しても伝わらない」「急に怒ってしまう」「同じことを何度も聞かれる」など、対応に悩む場面が少なくありません。
介護職として働き始めたばかりの方は、
- 同じ質問を何度もされると、どう答えればいい?
- 「帰りたい」と言われたらどう対応する?
- 怒っている利用者にどう声をかければいい?
- 拒否されたときは無理に介助していい?
- 認知症だから仕方ないと考えていい?
このような疑問を持つこともあるでしょう。
認知症の方への対応で大切なのは、**「間違いを正すこと」よりも「本人が安心できるように関わること」**です。
今回は、介護職が覚えておきたい認知症の方への接し方を7つ紹介します。あわせて、避けたい対応についても解説します。
1. 否定せず、まず話を聞く
認知症の方が事実とは異なることを話したとしても、最初から否定するのは避けましょう。
例えば、「家に帰らないと」「これから仕事に行かなきゃ」と言われた場合、
「もう仕事はしていませんよ」
「ここが家ですよ」
と訂正するだけでは、不安や怒りにつながることがあります。
まずは、
「帰りたいんですね」
「お仕事があるんですね」
と本人の気持ちを受け止めます。
そのうえで、「少しお茶を飲んでからにしましょうか」など、別の行動へ自然に誘導する方法もあります。
言葉の内容だけではなく、その言葉の背景にある気持ちを見ることが大切です。
2. ゆっくり、分かりやすく話す
認知症の方に一度にたくさんのことを伝えると、理解するのが難しくなる場合があります。
例えば、
「これからトイレに行って、そのあと着替えてから食堂に行きますよ」
と一度に説明するより、
「今からトイレに行きましょう」
と、一つずつ伝えたほうが分かりやすくなります。
また、早口で話したり、後ろから突然声をかけたりするのではなく、本人の視界に入ってから、落ち着いた声で話しかけることもポイントです。
3. 同じ質問を繰り返されても責めない
認知症の方から同じ質問を何度もされることがあります。
介護職側からすると、「さっきも説明したのに」と思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、本人は「さっき聞いた」ということ自体を忘れている可能性があります。
「さっき説明しましたよ」
「何回言えば分かるんですか?」
などと責めるのではなく、その都度できるだけ落ち着いて対応しましょう。
何度も同じ質問をする場合、単純に記憶が保てないだけではなく、不安や心配がある可能性もあります。
「何か気になることがありますか?」
と確認することで、原因が分かることもあります。
4. できることは本人にしてもらう
認知症があるからといって、すべてのことができなくなるわけではありません。
例えば、
- 衣服を選ぶ
- 食事をする
- 顔を洗う
- 歯を磨く
- 荷物を整理する
など、本人ができることはたくさんあります。
介護職が何でも先回りして行ってしまうと、本人が持っている能力を使う機会が減ってしまいます。
介助するときは、「できないから全部やってあげる」のではなく、本人ができる部分は見守り、必要な部分だけサポートすることを意識しましょう。
5. 怒っているときは無理に説得しない
認知症の方が怒っていたり、介助を拒否したりする場合、無理に説得するとさらに興奮してしまうことがあります。
例えば入浴を拒否しているときに、
「今日は入らないとダメですよ」
「仕事だからやらせてください」
と何度も迫るのは避けたほうがよいでしょう。
まずは一度距離を置き、本人が落ち着いてから再度声をかける方法もあります。
また、拒否の原因が、
「寒い」
「疲れている」
「恥ずかしい」
「何をされるのか分からない」
など、別のところにある可能性もあります。
拒否=わがままと考えず、「なぜ拒否しているのか」を考えることが重要です。
6. 生活リズムや習慣を大切にする
認知症の方は、環境の変化によって不安が強くなったり、混乱したりすることがあります。
そのため、できるだけ本人がこれまで続けてきた生活習慣や日課を大切にしましょう。
例えば、
「朝は新聞を読む」
「食後にテレビを見る」
「決まった時間にお茶を飲む」
など、本人にとって当たり前だった習慣が安心感につながることがあります。
介護職の都合だけで生活を変えるのではなく、本人のこれまでの生活を知ることも認知症ケアでは重要です。
7. 本人の尊厳を守る
認知症の方への対応で最も大切なことの一つが、本人の尊厳を守ることです。
認知症があっても、一人の人として尊重されることに変わりはありません。
例えば、本人の目の前で、
「この人は認知症だから分からない」
「何を言っても無駄」
などと話すのは避けるべきです。
また、排泄介助や入浴介助など、プライバシーに関わる介助では、周囲から見えないようにするなどの配慮も必要です。
認知症の症状だけを見るのではなく、その人自身を見ることを意識しましょう。
認知症の方への「やってはいけない対応」
ここまで紹介した7つのポイントと反対に、避けたい対応もあります。
何度も否定する
「違います」「そんなことありません」と否定し続けると、不安や怒りにつながる場合があります。
大声で叱る
本人が理解できないことを強い口調で責めても、状況が改善するとは限りません。
子ども扱いする
認知症があるからといって、幼児に話しかけるような言葉遣いをするのは避けましょう。
無理に介助する
拒否がある場合は、原因を確認せずに無理やり介助を進めないことが大切です。
本人の前で症状について話す
本人の尊厳を傷つける可能性があるため、本人への配慮を忘れないようにしましょう。
認知症の方への対応は「正解を教える」より「安心してもらう」
認知症の方への対応では、毎回同じ方法が通用するとは限りません。
同じ利用者でも、その日の体調や気分、周囲の環境によって反応が変わることがあります。
そのため、
「どうすれば言うことを聞いてもらえるか」ではなく、「なぜこのような反応をしているのか」
と考えることが大切です。
「帰りたい」と言っているなら不安があるのかもしれません。
「お風呂に入りたくない」なら、寒さや羞恥心、体調不良が原因かもしれません。
行動だけを見るのではなく、その背景にある気持ちや原因を考えることで、対応方法が見えてくることがあります。
まとめ
認知症の方への接し方で大切なのは、本人を否定したり、無理に行動を変えさせたりすることではありません。
今回紹介したポイントをまとめると、
- 否定せず、まず話を聞く
- ゆっくり分かりやすく話す
- 同じ質問を繰り返されても責めない
- できることは本人にしてもらう
- 怒っているときは無理に説得しない
- 生活リズムや習慣を大切にする
- 本人の尊厳を守る
という7つです。
介護職として働いていると、認知症の方への対応に難しさを感じる場面は必ずあります。
最初から完璧な対応をする必要はありません。
利用者の反応を見ながら、「なぜこうなったのか」「どうすれば安心してもらえるのか」を考える習慣を身につけることが、より良い認知症ケアにつながります。
